熱海殺人事件

1986年の日本映画です🇯🇵

つかこうへい原作の『小説熱海殺人事件』の映画化です。

監督は高橋和男



工員の大山次郎(竹田高利)が、幼なじみの女性を痴情のもつれの末に殺害するという事件が熱海で発生。
一見月並みなこの事件の捜査を担当することになったのは、警視庁の名物刑事・二階堂伝兵衛(仲代達矢)。
10年来彼とは愛人関係にあったものの、ついに別の若い男性(江藤潤)と結婚することを決意した女性警官の水野朋子(志穂美悦子)、そして伝兵衛の異母弟で富山から上京したばかりの新任刑事・熊田留吉(風間杜夫)が見守る中、伝兵衛はなんとも強引で型破りな捜査を繰り広げる……。







劇作家つかこうへいの出世作となった初期の代表作で
以後もたびたび続演されている同名人気舞台劇をつか先生自身の脚本によって映画化した作品です。

ある青年が熱海で起こした月並みな殺人事件を
自らの強引な論理に従って劇的な事件に仕立て直そうとする名物刑事とその周辺を描いたコメディです。

子供の頃にテレビか何かで観たことがありました。
当時はそんなに面白いとは思わなくて
内容もすっかり忘れていましたが…

ありえない想定
エキセントリックな登場人物たち
ツッコミどころ満載の展開

めちゃくちゃ面白かったです。

画質やファッションは少々古めかしい感じがしましたが
良い戯曲の形式を損なわず
クオリティもそれなりに高く
気がつけばストーリーにグイグイ引き込まれていきました。

出演者も曲者揃いで良かったですね♪

主演の仲代達矢さん…
昔は『無名塾のギョロ目のおじさん』というイメージしかありませんでしたが
改めて名優だと思いました。



仲代さんの愛人役の志穂美悦子さん…

幼少期には『ごっついお姉さん』のイメージでしたが

本作では意外と華奢で

お綺麗だと思いました。

現在は長渕剛さんの奥さんです。



言わずと知れた風間杜夫さんは
熱血だけどちょっと間抜けな田舎もんという役柄がお似合いですね。
イケメンな主役を張るよりこういう脇役の方がイイ味出せるような気がします。


かなりお薦めの作品です。

お時間があればどうぞ。


閉鎖病棟-それぞれの朝-

2019年の日本映画です🇯🇵

山本周五郎賞を受賞した帚木蓬生先生の同名小説が原作です。

監督は平山秀幸



母親や妻を殺害した罪で死刑判決を受けたものの、死刑執行が失敗し生きながらえた梶木秀丸笑福亭鶴瓶)は、扱いに困った法務省によって精神科病院に送られる。

そんな秀丸が出会ったのは、幻聴が聴こえて暴れるようになり、妹夫婦から疎まれて強制入院させられた元サラリーマンのチュウさん(綾野剛)と、父親からの性的虐待を受けて入院することになった女子高生の由紀(小松菜奈)。
世間に居場所のない3人は、互いに支え合い、懸命に生きていこうとする。
しかし突然の悲劇が彼らを襲う……。







長野県のとある精神科病院にいる

それぞれの過去を背負った患者たちの生き様を描いたヒューマンドラマです。


原作を読んでいないので何とも言えませんが

本当に私と同業の精神科医が書いた作品なの?

と疑ってしまうくらい

リアル感が全くなかったです。


フィクションですよ、これは…と言ってしまえばそれまでなんでしょうが

精神科病院に対する誤解を大いに生じてしまうよいな内容でガッカリしました😞


あんなに管理の甘い閉鎖病棟なんてありません。

『甘い』というのは患者さんに厳しいの対義語ではありません。


患者さんの安寧や生命を守れないという意味です。


閉鎖病棟の患者さんが自由に屋上に行ける訳ありません。作中のように飛び降りてしまいます。


ライターの管理はしているのに刃物の管理は何故してないの?


外泊中に亡くなった患者さんの遺骨を、いくら身内がいない人だったとしても、病棟に置いたりしません。


患者さんは離院し放題だし

精神科医の病歴聴取もいい加減だし

そう言えば女性医師は1人もいなかったなぁ💦


綾野剛さん扮する患者さんが外出の時に買ってきた物を他患に売りつけるシーンがありましたが

それを見た看護師が

『そんなことをするとまた保護室ですよ』と。

かなり問題発言です。

リアルでは懲戒解雇ものの発言ですね。


そもそも病院内であんなに簡単に殺人事件なんて起こりません。


精神科病棟への恐怖と偏見を与えてしまうお話で

とても残念でした。


ただ…大好きな綾野剛さんが出演していたから

良しとしましょう。



鶴瓶さんはホント演技が上手いです。

それだけですね、良かったのは。




小松菜奈さん…演技力が評判の女優さんのようですが

本作では???でした。

ファンの方がいらっしゃったらゴメンなさい🙇‍♀️



患者役で木野花さんが出演されていました。

ちょい役でしたが存在感がありました。



あんな感じの
自立して一見レベル高そうだけど
バリバリ妄想の患者さん…いらっしゃいますね。

お時間があればどうぞ。

サンダカン八番娼館 望郷

1974年の日本映画です🇯🇵

原作は第4回大宅壮一ノンフィクション賞に輝いた山崎朋子先生の著作です。

監督は熊井啓



女性史研究家・三谷圭子(栗原小巻)は『からゆきさん』のことを調べる過程で天草にて小柄な老女サキ(田中絹代)と出会った。
サキがからゆきさんであると確信した圭子は、彼女が経験した過去を聞き出すため共同生活を始める。
やがてサキはその重い口を少しずつ開いて、あまりにも衝撃的な生涯を語り始めるのだった……。







南方の島へと売春の出稼ぎに渡った『からゆきさん』さんと呼ばれる日本人少女たちの

辛く波乱に満ちた実態を描いたヒューマンドラマです。


あまりにも悲しい史実に観ていて胸が苦しくなりました。


日本にこのような暗黒の歴史があったことを本作で初めて知りました。


決して目を背けちゃいけないお話だと思いました。


サキ役の田中絹代さんは本作が遺作だそうです。

第25回ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を獲得されました。

こんな素晴らしい女優さんがかつていらっしゃったんですね。

圧巻の演技でした。



すごいおばあさんに見えますが

この時まだ64歳で

その3年後に逝去されています。


栗原小巻さんは美しかったですね。

美しいだけでなく

演技も素晴らしかったです。



かなりお薦めの作品です。

古い映画…なんて言わないで

若い方々に観ていただきたいです。


ファブリック

2018年のイギリス映画です🇬🇧

脚本・監督はピーター・ストリックランド。



離婚したばかりで公私ともに冴えない日々を送るシーラ(マリアンヌ・ジャン=バプティスト)はセール中のデパートで真っ赤なドレスを買う。

その魅力的なドレスは不思議と彼女の身体に馴染み、シーラは自分の人生を変えてくれる幸運の贈り物のように思えた。

新しい出会いを求め、ドレスを着てデートに出かけるシーラだったが、不可解な出来事が次々と起こり……。









呪われた赤いドレスを手にした人々の恐怖を描いたホラー映画です。


サイケデリックで洗脳的な映像と音楽が印象的で

観る者を不安にさせる作品です。


ストーリー自体はどうってことはないのですが

結局何を表現したいのかが今ひとつわからなくて

ひたすら不気味でした。


一番不気味だったのがデパートのCMのシーン。

サブリミナル的な感じでとても怖かったです。



もう雰囲気だけのお話ですね。

好き嫌いが分かれる作品だと思います。


個人的にはシーラが痛々しくてお気の毒でしたね。

離婚したアラフィフ女性の悲哀感がひしひしと伝わってきました。




このおばちゃん(デパートの店員)…気持ち悪かったです。

会話が滅裂で『言葉のサラダ』みたいだったなぁ。


お時間があればどうぞ。


死の十字路

1956年の日本映画です🇯🇵

原作は江戸川乱歩

監督は井上梅次



伊勢商事社長の伊勢省吾(三國連太郎)は秘書の晴美(新珠三千代)と不倫関係にあった。
密会していたある夜、伊勢の妻・友子(山岡久乃)が髪を振り乱し短刀を手に駆け込んできた。
何とか妻を抑えようとした伊勢だったがはずみで殺害してしまう。
そこで伊勢は愛する晴美との生活を守るため、ダムに妻の死体を捨てることを思いつくと、車のトランクに死体を押し込んでダムまでの長い道を走り始める。
しかしとある十字路でトラックと事故を起こしてしまう……。









商事会社の社長が愛人との密会現場に現れた妻を誤った殺害してしまったことから

やがて窮地に追い込まれていく様を描いたサスペンス映画です。


かなり古い作品でしたが

見応えがあって面白かったです。


そもそもは正当防衛から始まり

最初に自首しておけば情状酌量になったのに…

ともどかしい気持ちで観ていましたが


次第に主人公に感情移入してしまい


最終的には応援しちゃいました。


事態が二転三転し

主人公とその愛人が何だかお気の毒でした。

2人とも悪人ではなかったのです。


主人公を演じたのは若かりし頃の三國連太郎さん。

ハーフっぽいお顔だちで

演技力も素晴らしく

なかなかのイケメンでした。



愛人役の新珠三千代さん…

スレンダーで完璧なお顔だち。

昔の女優さんって演技力は今ひとつでしたが

絶世の美女が多かったですね。


大坂志郎さんが二役で出演されていました。

多分正義はこの人の方なんだけど

嫌な人でした。



ハラハラドキドキもあり

お薦めの作品です。

お時間があればどうぞ。


アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち

2011年のアメリカ映画です🇺🇸

脚本・監督はサム・レヴィンソン。

レインマン』のバリー・レヴィンソンの息子です。







リン(エレン・バーキン)は、前夫との間にもうけた息子の結婚式に参列するため、新しい家族と共に実家に帰って来る。

彼女は、久しぶりに前夫ポール(トーマス・ヘイデン・チャーチ)や短気なその妻(デミ・ムーア)、いい加減な自分の母親(エレン・バースティン)らと再会。

久しぶりの再会にもかかわらず、自分勝手なことばかりを主張する彼らは、やがて結婚式当日を迎え……。









とある家族が結婚式に参加するために再会するものの
お互いに噛み合わない姿を鮮烈に描いたヒューマンドラマです。

とにかく

ひでー家族だなー

というのが最初の感想。

誰一人としてまともな人はいませんでした。

人物相関図です。


主人公のリンの家族…

長女(前夫との子)は自傷癖のある女子大生。

二男(現夫との子)はヤク中の高校生。トゥレット症候群と強迫性障害があります。

三男(現夫との子)はアスペルガー症。

この子が一番まともだったのと

姉弟仲が良かったのがせめてもの救い。



二男を演じた俳優さん…

どこかで見たことあるなぁ

って思っていたら

少年は残酷な弓を射る』のエズラ・ミラーでした。




リンが再婚した夫(二男と三男の父親)は悪い人ではありませんでしたが

お気楽な人すぎてイラッときました。


リンの前夫はDV男だし

再婚相手の女性(デミ・ムーア)はビッチで喧嘩っ早いし…

まあ不愉快な夫婦でした。



長男は良い人でしたね。


リンの母親もかなり酷い人でした。

リンの情緒不安定と被害妄想はこの母親の育て方に由来するものではないかと思いました。



最後は衝撃的でした。

二男の予言が当たったというか何というか…


ラストは台詞もなく

映像とニーナ・シモンの『Everything Must Change 』が流れるだけで

観ていて重苦しい気持ちになりました。



いかにもアメリ中流階級の家族のお話といった作品でした。


お時間があればどうぞ。



ブーメランファミリー

2013年の韓国映画です🇰🇷

監督はソン・ヘソン。



落ちぶれた映画監督の次男・インモ(パク・ヘイル)は離婚寸前の別居中。

下宿先を追い出され実家へ転がり込むことに
実家では、刑務所帰りの長男・ハンモ(ユン・ジェムン)が母(ユン・ヨジョン)と二人で暮らしており、インモが実家で暮らすことに反発、兄弟喧嘩が勃発。
さらに、末っ子の長女ミヨン(コン・ヒョジン)が夫に殴られ離婚し娘のミギョン(チン・ジヒ)と一緒に実家へ帰ってきた。

3人が全員出戻りで一緒に暮らすことになり、兄妹たちは毎日喧嘩が絶えない中、母は毎日子供たちのために肉を焼き続けるのだが……。