カノン

2016年の日本映画です🇯🇵

監督は雑賀俊朗。



東京で生活している専業主婦の長女・宮沢紫(ミムラ)、富山県黒部市に暮らす小学校教諭の次女・岸本藍(比嘉愛未)、金沢の老舗料亭でおかみとして働く三女・岸本茜(佐々木希)。
祖母(多岐川裕美)の葬儀で久々に顔を合わせた3姉妹は、遺書に死んだと聞かされていた母・美津子(鈴木保奈美)が生きていると記されていて驚く。
父の死を機に酒に溺れ、火事で重傷を負い、自分たちから離れていった美津子の軌跡を知った三人は、彼女のいる富山の介護施設へと向かう。
だが、彼女はアルコール性認知症が原因で娘たちのことを認識できず……。








美しい三姉妹のほのぼのドラマかと思いきや
かなり陰鬱で重い作品でした。

アルコール依存症を軸に、認知症モラルハラスメント児童虐待など、盛りだくさんのテーマがギュウギュウに詰め込まれています。
消化不良な感が否めません。

一言で言えば、『機能不全家族』のお話です。
三姉妹が美人すぎるので騙されそうになりますが
全員が病的です。

アルコール性認知症のお母さんが最も重症に描かれていますが
いやいや
機能不全家族の根源は多岐川裕美さん扮するおばあちゃんで、この人が一番救いようがないように見えました。

長女は長女が故に自らを抑圧して育ち、気がつけばモラハラ夫に洗脳されて強迫性障害を来しているし

次女は三姉妹の中で一番常識的な感じに見えますが、摂食障害に罹患しています。
(パンを大量に買い込んでいるシーン…アレは過食症という意味だと私は理解したのですが)

そして三女はお母さんと同じアルコール依存症まっしぐら。

しかし三姉妹の心の闇はあっさりと解決してしまいます…軽やかなカノンの調べとともに。

現実はそんなに甘くないです。

ネタバレになるかもしれませんが
ラストのシーン…

許しちゃダメなんですよ。
アルコール依存症に対しては毅然とした態度を貫かないと。
綺麗事で終わらせちゃって
ちょっと残念でした。

実は何も解決していない三姉妹の心の闇は、もし続編があれば、きっと別の形で再燃してくるお話になるはずだと私は思いました。

こういう作品は、どうしても精神科医の目線で観てしまいますね💦

それと…
アルコール依存症の治療が映画の中では何故か脳外科で行なわれていました。

いや違うでしょ?

精神科です!


なんか辛口の評価ばかりですみません。

しかしながら鈴木保奈美さんの演技は素晴らしかったです。



アルコール依存症者の演技…ほぼ完璧だったと思います。
久里浜医療センターが監修していますが
ただ、その割には細部が雑でしたね。

それと…
次女が勤務する小学校で、明らかに児童虐待を受けている女の子が登場するのですが
その後どうなったかが回収されていない。

さらに…
長女と子供たちの行く末が曖昧になっていて
モヤモヤしました。

三女の葛藤も中途半端で終わっています。
もうちょっと丁寧に描いてあげて欲しかったです。

やはり約2時間の作品に盛り込みすぎなんでしょうね。


フィクションとしては面白かったです。
お時間があれば観てみてください。
家族愛とか家族の再生のお話ではありません。
機能不全家族のお話ですので
くれぐれも心して観てください。