こおろぎ

2006年の日本映画です🇯🇵

一部の映画祭やイベントで上映されただけで
長きに渡りお蔵入りとなっていた作品です。
2020年1月8日にDVDで発売され
この度アマゾンプライムで観ることが可能となりました。
監督は青山真治



西伊豆で、もう若くはなくなってきた女のかおる(鈴木京香)は、目が不自由で口も利けない男(山崎努)と暮らしているが、その実態は男を『飼っている』状態に近かった。
かおりには『私がいなければこの男は生きていけない』という優越感があったが、男は近頃ひとりで出歩き、深夜の海につかるといった不可解な行動を取るにようになっていた。
そんなある日、かおるは地元のバーで出会った若い男(安藤政信)と女(伊藤歩)から、その土地に伝わる謎めいた歴史を聞かされるが……。






平坦なテンポでストーリーが進みますが
明確な意味は不明です。
真剣に鑑賞しようと思ったら裏切られます。
ほぼ全編を通して???です。

途中から
この映画は観ちゃいけないんだな
感じる映画なんだ!
と思いました。

登場人物の関係性はおろか
どんな人なのか
いや
誰なの?あなたは…
って思ってしまうほど
人に対する定義づけが曖昧です。

鈴木京香さん演じる女性に唯一『かおる』と名前がついていますが
名前があるだけで了解不能な人物です。

ここからは私の独断による解釈というか
精神科医目線での解釈です。

『かおる』は確実に精神を病んでいます。
幻視や幻聴、妄想もありそうです。
ラスト近くの病院のシーンと『一年後』がそれを彷彿させます。

これは彼女の妄想の世界のお話なのでは?
と感じました。

そう考えると不可解なことを呟く伊藤歩さんや
瞬間移動する安藤政信さんが説明できるような気がします。

山崎努さん演じる盲目の男性は神がかっているとかキリストの再来などと評している方がいらっしゃるようですが

あんな汚い(失礼!)神様はいません。
『かおる』が彼女の自我を支えるために創り出した産物(つまり、実体がない)に過ぎないのでは?
と思いました。

で、ここからは映画ファン目線の解釈というか感覚です。

伊豆、ロッジ風の別荘、山崎努
このキーワードから伊丹十三監督の『お葬式』という作品を連想しました。

後半の鈴木京香さんが喪服のような黒いドレスを着ていたり(まさにお葬式!)

ロッジのベランダで山崎努さんが転倒するシーンなどは『お葬式』で奥村公延さんが亡くなるシーンと完全にオーバーラップしました。




さらに…
本作での飲食シーンを観ていると
伊丹十三監督の『タンポポ』を思い出しました。

山崎努さんと鈴木京香さんがチキンを貪り食う様が『タンポポ』で描かれていたエロティシズムとオーバーラップしたのは私だけでしょうか?



↑チキンの脂でギトギトになった鈴木京香さんの指を山崎努さんが舐めるシーンが『タンポポ』のこのシーンを彷彿しました。

調べてみたら本作を撮影されたたむらまさきさんって『タンポポ』の撮影も担当されていたことが判明!

単なる偶然でしょうか!

好き嫌いがある作品のようですが
一見の価値ありと私は思います。