十九歳の地図

1979年の日本映画です🇯🇵

原作は中上健次先生の同名小説です。
監督は柳町光男



十九歳の吉岡まさる(本間優二)は、和歌山から上京してきてから新聞配達をしながら予備校に通っている。
集金に行けば、どこの家からも胡散臭くみられ、嫌われ、その存在はほとんど無視されている。
吉岡は密かに配達区域の地図をつくっている。
Aの家は毎日犬が吠えてくる。
×印ひとつ。
Bの家は玄関先に生意気にも真っ赤な花が咲いた花鉢を置いてやがる。
×印ふたつだ。
それぞれの不満度を×印の数で表した後は、今度はそれぞれの家に片っ端からいやがらせのいたずら電話をかけていく。
そして、彼の行動は次第にエスカレートしていき……。









新聞配達をしながら予備校に通う十九歳の青年が、世間に対するやり場のない怒りをイタ電で発散するというお話です。

当時の王子バラックが舞台で
汚くて陰鬱な作品でしたね。

最初の方で犬を殺して玄関先に吊り下げたり
金魚を手で握り潰して殺すシーンが出てきて

この青年…そのうち反社会的なことをやらかすな!
と思いながら観ていましたが
その後大したことはせず

イタ電の内容が過激になっていっただけで
ひたすら根暗で終始しました。

とはいえ
まあまあ面白かったです。

主演の本間優二さん…
本作がデビュー作で
暴走族の『ブラックエンペラー』(のちに宇梶剛士さんも在籍)の元総長とのこと。
現在は俳優を引退されています。


一見ベビーフェイスですが
目つきがかなりヤバイです💦
迫力はありますが
演技は台詞が棒読みでイマイチかも。

しかし!
その主役の稚拙な演技を払拭するかの如く
脇役の2人が素晴らしかったです。

まずは蟹江敬三さん…
新聞販売店に間借りする中年クズ男・紺野。
後輩からお金を借りて返さない
ギャンブルはする
ひったくりや強盗を繰り返す…
救いようがない男でしたが
何だか憎めなかったです。


『どういう具合に生きていったらいいのかわからないなぁ』という言葉を時々呟いていましたが
この言葉こそが本作を象徴しているように思えました。

そして沖山秀子さん…
蟹江さんの恋人『マリア』役です。
自殺願望が強く
ビルの8階から飛び降りたけれど死ななくて
足に障害が残って跛行する…という役柄ですが

これ…沖山さんが1977年に実際に起こしたことで
リアルがそのまま役になっていてビックリしました。


沖山さんは精神科病院に7回入院し、留置経験3回、自殺企図4回の強者です💦
ジャズシンガーでもありました。
おそらく境界性パーソナリティ障害だったと思われます。

↑蟹江さんも沖山さんもすでに物故者です。

さらに今年1月に亡くなった原知佐子さん…
お綺麗でした。



まずまずお薦めの作品ですが
心が弱っている時には観ない方が良いかも。

ちなみに尾崎豊さんのアルバム『十七歳の地図』は本作を観て製作されたそうです。